執行役(しっこうやく)は、指名委員会等設置会社にのみ置かれる、業務執行のトップ(経営責任者)です。
一般的な会社(取締役会設置会社)の「代表取締役」や「取締役」とは役割や位置づけが大きく異なります。
1. 執行役の基本概要
指名委員会等設置会社では、「監督と執行の分離」が徹底されています。
- 取締役・取締役会: 実際のビジネスには口を出さず、経営方針の決定と、執行役の「監督」に専念する。
- 執行役: 取締役会から大幅に委譲された権限をもとに、スピーディーにビジネスを「執行」する。
所有と経営、さらに「監督と実行」を分けることで、ガバナンス(企業統治)を強化しつつ、迅速な意思決定を行うために置かれるポジションです。
2. 執行役の選任機関と選任期間(任期)
取締役や監査役と異なり、株主総会ではなく取締役会によって選ばれるのが特徴です。
- 選任機関:取締役会
- 取締役会が決議によって執行役を選任します(会社法402条)。
- 選任期間(任期):原則1年
- 選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後、最初に行われる取締役会の終結の時まで。
- 定款でこれより短縮することは可能ですが、伸ばす(伸長する)ことはできません。
3. 代表執行役と取締役との兼任
- 代表執行役:
- 執行役が複数いる場合、取締役会はその中から会社を代表する「代表執行役」を選任しなければなりません(1人の場合はその人が自動的に代表執行役となります)。一般的な会社の「代表取締役社長」に相当します。
- 取締役との兼任:
- 原則として兼任は可能です。社内のエース級の取締役が執行役を兼任するケースは多く見られます。
- ただし、執行役をチェックする立場である「監査委員」だけは、執行役を兼任することができません(会社法400条4項)。
4. 違いの整理:「執行役」vs「執行役員」
実務で最も混同しやすい、法律上の役員である「執行役」と、自主導入される「執行役員」の違いです。
| 項目 | 執行役(しっこうやく) | 執行役員(しっこうやくいん) |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 会社法上の「役員」(法的地位あり) | 会社法上の役員ではない(単なる社内称) |
| 設置できる会社 | 指名委員会等設置会社のみ(必須) | どんな会社でも自由に設置可能 |
| 選任する機関 | 取締役会 | 取締役会(または社長の判断など) |
| 契約の性質 | 会社との委任契約 | 多くは会社との雇用契約(従業員トップ) |
| 商業登記 | 登記簿に氏名が登記される | 登記はされない |
実務上のポイント
- 執行役は、代表取締役と同等レベルの強い法的権限と責任を持つ「経営幹部」です。
- 執行役員は、部長や事業部長の延長線上にある、実務をスムーズに回すための「従業員の肩書き」に過ぎません。