公認会計士短答式試験の「企業法」において、最後の2問(問19・問20/配点10点分)で毎年必ず出題される金融商品取引法(金商法)の重要ポイントをまとめました。
論文式試験では範囲外となるため、短答対策としては「深追いせず、頻出の条文とキーワード(数字・主語)を確実に押さえて得点を死守する」というコストパフォーマンス重視の戦略が基本となります。
本番直前のチェックリストとしても活用してください。
1. 「有価証券」の定義(第2条)
金商法が適用される「有価証券」には以下の2種類があり、適用される規制の厳しさが異なります。試験ではこの2つの区別や、規制対象に含まれるかどうかが頻出します。
- 1項有価証券(流動性が高い・形式的な証券がある)
- 国債、社債、株式、新株予約権証券など。
- 2項有価証券(流動性が低い・証券が発行されない「みなし」有価証券)
- 合同会社の社員権、集団投資スキーム(ファンド)の持分、信託受益権など。
⚠️ 短答試験のひっかけポイント
「合同会社の社員権やファンド持分は、流動性が低いため金商法上の有価証券には含まれない」という×肢が超頻出です。これらも「2項有価証券」として金商法の規制対象になります。
2. 開示規制(ディスクロージャー)の金額基準と書類
募集・売出しを行う際のルールです。数字と書類の組み合わせ、および提出先がそのまま出題されます。
① 発行市場の開示(新しく発行・売り出すとき)
- 有価証券届出書
- 募集・売出しの総額が1億円以上の場合に、あらかじめ内閣総理大臣(金融庁)に提出する義務があります。
- 目論見書(もくろみしょ)
- 投資家に判断材料を与えるための書類。原則として、投資家に「あらかじめ、または同時に」交付しなければなりません(事後交付はNG)。
② 流通市場の開示(継続開示規制)
- 有価証券報告書(有報)
- 事業年度終了後3ヶ月以内に提出(内国会社の場合)。
- 臨時報告書
- 主要株主の異動、災害による多大な損害など、会社の財政状態に重大な影響を与える事象が起きた場合に「遅滞なく」提出。
⚠️ 短答試験のひっかけポイント
有報の「3ヶ月以内」と、臨時報告書の「遅滞なく」を入れ替える問題が定番です。また、金額基準の「1億円」を「5,000万円」などに変えてくる引っかけにも注意してください。
3. インサイダー取引規制(第166条)
「誰が」「いつ」「何をしたら」アウトになるのかの線引きが問われます。
- 規制対象者(会社関係者)
- 役員、従業員(パート・アルバイト含む)
- 帳簿閲覧権を持つ大株主(総株主の議決権の3%以上を保有)
- 契約締結交渉中の取引先
- 会社関係者から直接情報を聞いた「情報受領者」
- 規制が解除される「公表」のタイミング
- 次のいずれかを満たすと「公表された」とみなされ、それ以降の取引はセーフ(適法)になります。
- 2つ以上の報道機関に公開されてから12時間が経過した(12時間ルール)。
- 適時開示情報閲覧サービス(TDnet)において公衆の縦覧に供された(掲載された瞬間に公表扱いとなるため、時間経過は不要)。
- 次のいずれかを満たすと「公表された」とみなされ、それ以降の取引はセーフ(適法)になります。
⚠️ 短答試験のひっかけポイント
「パートタイマーや契約社員は会社関係者に含まれない」「情報を直接聞いただけで、自ら会社に所属していない『情報受領者』は規制対象外である」といった肢はすべて×です。網が広くかかっている点を意識してください。
4. 会社法と金商法(開示・監査)の比較
公認会計士の監査に直結するため、非常に狙われやすい比較ポイントです。
| 項目 | 会社法(計算書類など) | 金商法(有価証券報告書など) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 株主・債権者の保護(利害調整) | 広く一般的な投資家の保護(市場の公平) |
| 開示対象 | すべての株式会社 | 上場会社など(一部の会社) |
| 監査を行う者 | 会計監査人(公認会計士・監査法人) | 公認会計士・監査法人 |
| 提出・開示先 | 定時株主総会(株主へ開示) | 内閣総理大臣(金融庁・一般へ開示) |
⚠️ 短答試験のひっかけポイント
金商法上の監査を行うのは、会社法上の用語である「会計監査人」ではなく、条文上は「公認会計士または監査法人」と規定されています。主語の定義が微妙に異なるため、選択肢の主語をしっかり確認しましょう。
短答式試験に向けた学習アドバイス
金商法は、会社法のように「複雑な事例を現場で組み立てて考える」必要はほとんどありません。
上記にある「1億円」「3ヶ月」「12時間」「2項有価証券も含む」といった、明確なキーフレーズを覚えているかどうかだけで勝負が決まります。
過去問を解く際は、解説文の「数字」や「主語」に注目し、パターンの暗記に徹するのが最も効率的です。確実に1〜2問を死守しましょう!