会社法において、議決権を有しない株主が無条件に株式買取請求権を有することはありません。
株式買取請求権は、株主の利益を保護するための強力な権利であり、行使できる場面が法律で厳格に限定されています。そのため、議決権の有無だけで自動的に認められる性質のものではありません。
1. 株式買取請求権とは?
会社の組織や性質が根本的に変わるような重大な組織再編や定款変更が行われる際に、それに反対する株主に対して、会社に「自分の持っている株を公正な価格で買い取れ」と請求できる権利です(投下資本の回収機会の確保)。
- 主な対象場面: 合併、事業譲渡、会社分割、株式交換、株式の譲渡制限を設定する定款変更など
2. 議決権のない株主に買取請求権が認められる条件
法律上、買取請求権を行使できるのは原則として「反対株主」です。議決権制限株式などの議決権がない株主に買取請求権が認められるかどうかは、以下の要件によって分かれます。
① 原則:認められない(株主総会で議決権がない場合)
ある組織再編(例:合併)について株主総会で決議する際、その決議について議決権を持たない株主は、原則として「反対株主」になれないため、株式買取請求権は認められません。総会手続きにおいて「反対の意思表示」をすることができないためです。
② 例外:認められるケース(実質的な不利益を被る場合)
議決権がない株主であっても、その組織再編や定款変更によって直接的・実質的な不利益を被る場合には、例外的に株式買取請求権が認められます。主なケースは以下の2つです。
A. 種類株主総会が開催される場合(会社法785条2項1号ロ など)
組織再編によって当該種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、全体の本総会とは別に「種類株主総会」を開催しなければならない場合があります。
この種類株主総会において議決権を有する株主は、本総会で議決権がなくても、種類株主総会に先立って反対の通知をし、当日反対することで「反対株主」となり、買取請求権を行使できます。
B. 簡易組織再編などで株主総会自体が決議を省略する場合
「簡易組織再編」など、株主総会の決議を経ずに取締役会の決議等で組織再編を行う場合があります。
この場合、誰も株主総会で議決権を行使できませんが、全株主に対して通知または公告がなされます。このケースでは、議決権の有無にかかわらず、一律にすべての株主に株式買取請求権が認められます。
まとめ
議決権を有しない株主であっても、特定の組織再編や定款変更によって不利益を被る可能性がある局面(種類株主総会が開催される場合や、総会決議が省略される場合など)においては、株式買取請求権の行使が認められます。
しかし、これは法が定めた特定の要件を満たした場合に限られるため、「無条件に有する」ということはありません。