会社法において、会社の業務や会計をチェックする「監査」の権限が、特定の個人に属するのか(独任制)、それとも組織として行使されるのか(合議制)は、採用している機関設計(会社の形態)によって明確に異なります。
実務上の混乱を防ぐために、それぞれの特徴と違いを以下にまとめました。
1. 監査役(監査役会設置会社など):【独任制】
通常の監査役(監査役会がある会社も含めて)は、基本的に独任制(どくにんせい)です。
- 単独での権限行使:
各監査役は、他の監査役の意向や監査役会の決定に縛られることなく、単独で取締役に対して報告を求めたり、会社の業務や財産の状況を調査したりできます(会社法381条)。 - 監査報告での少数意見の付記:
監査役会としてひとつの監査報告を作成する場合でも、自分の意見が全体の意見と異なる(少数意見である)ときは、その内容を監査報告に付記することができます(会社法393条2項)。多数決で個人の意見が葬り去られることはありません。 - 監査役会との関係:
監査方針や調査方法などは「監査役会の決議」で定めますが、各監査役が「個別に必要だ」と判断した独自の監査権の行使(独自の調査など)を制限することはできません(会社法390条2項但書)。
2. 指名委員会等設置会社(監査委員会):【合議制】
指名委員会等設置会社には「監査役」という役職は存在せず、取締役の中から選ばれた3名以上の取締役で構成される監査委員会(合議体)が監査を担います。
- 多数決による意思決定:
監査委員会の職務執行に関する意思決定は、個々の委員が単独で行うのではなく、監査委員会の決議(過半数の賛成など)によって行います。 - 調査権の行使(選定監査委員):
個々の委員がいつでも自由に単独で調査できるわけではありません。実務を円滑に回すため、監査委員会の中から実際に調査等を行う「選定監査委員」をあらかじめ決めておき、その選ばれた委員が代表して取締役や執行役への報告要求、業務・財産の調査を行います(会社法405条)。 - 制度の狙い:
経営の「執行」と「監督」を完全に分離したガバナンス