株主総会に提出される各機関の「選任」や「解任」の議案は、最終的に株主総会へ上程(提出)されますが、その議案の実質的な中身を決定する(作る)権限は機関ごとに全く異なります。
会社法では、「チェックされる側(取締役)」が「チェックする側(監査役・会計監査人)」を都合よくコントロールできないよう、不正(お手盛り)を防ぐ強力なブレーキがかけられています。
1. 議案の決定権者一覧(まとめ)
| 対象となる議案 | 議案の実質的な決定権者 | 監査役(会)の関与・防衛策 |
|---|---|---|
| 取締役の選任・解任 | 取締役(会) | 原則なし(※指名委員会等設置会社では指名委員会が決定) |
| 監査役の選任 | 取締役(会) | 監査役(会)の同意がなければ総会に提出不可 |
| 監査役の解任 | 取締役(会) | 監査役に株主総会での意見陳述権あり |
| 会計監査人の選任・解任 | 監査役(会) | 監査役(会)が議案内容を100%単独で決定する |
2. 各議案の決定プロセスと会社法の狙い
💡 取締役の「選任・解任」議案
- 決定権者: 取締役(会)
- 仕組み: 基本的には、現在の経営陣(取締役会)が「次の取締役候補はこの人たちです」「この取締役は問題があるので解任します」という議案を作ります。
💡 監査役の「選任」議案
- 決定権者: 取締役(会) + 監査役(会)の「同意」
- 仕組み: 取締役が勝手に「自分にとって都合の良い味方」を監査役候補に選ぶのを防ぐため、取締役が議案を作る段階で監査役(または監査役会)の同意を得ることが必須となっています。
💡 監査役の「解任」議案
- 決定権者: 取締役(会)(※ただし強い防衛策あり)
- 仕組み: 取締役を厳しく取り締まった監査役が、取締役から「煙たいからクビにしてやる」と逆恨みで解任議案を出されるリスクがあります。そのため、解任議案が出された監査役は、株主総会の場で「私は不当に解任されようとしています」と自ら意見を述べる権利(意見陳述権)が保障されています。
💡 会計監査人(監査法人など)の「選任・解任」議案
- 決定権者: 監査役(会)
- 仕組み: 会計監査人の議案については、取締役の権限が完全に剥奪されています。誰を会計監査人にするか、あるいはクビにするかという議案の決定権は100%監査役(会)にあります。
- 狙い: 会計監査人は決算書に嘘がないかをチェックする立場です。取締役に議案の権利を与えてしまうと、「厳しくチェックする監査法人はクビにして、見逃してくれる緩い監査法人を選ぼう」という不正が起きるため、取締役を完全にシャットアウトしています。
📌 【補足】指名委員会等設置会社の場合
上場企業などにみられる「指名委員会等設置会社」では、社外取締役が過半数を占める「指名委員会」が、取締役の選任・解任議案を単独で決定する権限を持っています。