非公開会社(譲渡制限会社)では、会社にとって好ましくない人物が経営に関与することを防ぐため、株式の譲渡に会社の承認が必要となります(会社法127条、130条、136条〜140条)。
一般的な譲渡プロセスは以下の6つのステップです。
- 譲渡承認の請求
株主(または譲受人)が、会社に対して「株式を譲渡したいので承認してください」と請求します(書面推奨)。もし会社に拒否されたら会社や指定買取人に買ってほしい場合は、その旨(買取請求)も併せて記載します。 - 譲渡承認の決定(機関決定)
定款に別段の定めがない限り、以下の機関で承認するかどうかを決定します。
- 取締役会設置会社: 取締役会
- 取締役会非設置会社: 株主総会
- 決定内容の通知
請求の日から2週間以内に結果を通知します。通知を怠ると、会社は譲渡を承認したものとみなされます。 - (否認の場合)買取人の指定・通知
会社が譲渡を拒否し、かつ株主から買取請求があった場合、会社自身が買い取るか、別の「指定買取人」を指定しなければなりません(会社買取は2週間以内、指定買取人は40日以内に通知)。 - 譲渡契約の締結と決済
会社から承認を得られたら(または承認とみなされたら)、当事者間で「株式譲渡契約(JPA)」を締結し、代金を決済します。 - 株主名簿の書換
譲渡人と譲受人が共同で、会社に対して株主名簿の書き換えを請求します。これを行わないと、譲受人は会社に対して株主としての権利(議決権や配当金受領)を主張できません。
会社自らが買い取る場合の法的ルール(自己株式の取得)
会社が譲渡を承認せず、「会社自らがその株式を買い取る(自己株式として取得する)」と決定する場合、実質的に「特定の株主からの自己株式の有償取得」となるため、会社法上、非常に厳しい規制が課されます。
1. 取締役会設置会社でも「株主総会の特別決議」が必要
「取締役会があるなら、買い取りの決定も取締役会でできるのでは?」と混同しやすいポイントですが、取締役会設置会社であっても、会社が買い取る場合の「買い取る旨」および「条件(数量や対価)」の決定は、必ず株主総会の特別決議が必要です(会社法140条2項)。
- 特別決議の要件: 議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成。
【注意】譲渡請求をした株主の議決権排除
株式を売りたいと請求している本人(譲渡等承認請求者)は、この株主総会において議決権を行使することができません(会社法140条3項)。※他に議決権を行使できる株主が誰もいない場合を除く。
2. 「指定買取人」が買う場合はルールが異なる
会社自らではなく、会社が指定した第三者(他の役員や特定の株主など)に買わせる(=指定買取人を指定する)場合、決定権限は以下のようになります。
- 取締役会設置会社: 取締役会の決議で指定可能。
- 取締役会非設置会社: 株主総会の特別決議が必要。
3. 財源規制(分配可能額)の制限
会社が自ら買い取る場合、会社の「分配可能額」の範囲内でしか対価を支払うことができません(会社法461条1項2号)。
財務状況が悪く、分配可能額が足りない場合は、株主総会で特別決議を通したとしても、会社が自ら買い取ることは法的に不可能です。その場合は「指定買取人」を立てて対応することになります。
各ケースにおける決定権限のまとめ
| 手続きのステップ | 取締役会設置会社 | 取締役会非設置会社 |
|---|---|---|
| 1. 譲渡を「承認」する決定 | 取締役会 | 株主総会(普通決議) |
| 2. 拒否して「会社自ら」が買い取る決定 | 株主総会(特別決議) | 株主総会(特別決議) |
| 3. 拒否して「指定買取人」が買い取る決定 | 取締役会 | 株主総会(特別決議) |
実務上の注意点
実質的なワンマン会社や親族会社では、身内同士