結論から言うと、通常の株式分割において、株主の「株式買取請求権」が発生することはありません。
株式買取請求権は、組織再編や定款変更などによって株主が不利益を被るリスクがある場合に、会社に対して「保有株を公正な価格で買い取れ」と請求できる権利です。株式分割がこれに該当しない理由は以下の通りです。
株式買取請求権が発生しない2つの理由
1. 株主の経済的価値(持分比率)が変わらない
株式分割は、すでに発行されている1株を2株や3株に細分化する手続きです。分割によって株数が増える分、1株あたりの価値(株価)は理論上比例して下がります。
しかし、会社の資産規模が変わるわけではなく、株主が保有する「株式の総価値」や「議決権比率(持分比率)」は維持されるため、株主に不利益は生じないと設計されています。
2. 会社法上の規定がない
会社法において、反対株主の株式買取請求(会社法116条など)が認められる事由の中に、株式分割(会社法183条)は含まれていません。
例外的に「端数」が生じるケースとその保護策
非常に稀ですが、「1株を1.5株にする」といった株式分割を行った場合、1株未満の「端数(はすう)」が生じる株主が出てきます。
この場合、株主は「株式買取請求権」を行使するのではなく、以下の会社法上の仕組み(手続き)によって自動的に保護されます。
- 端数の処理(会社法234条)
1株に満たない端数が生じた場合、会社はその端数の合計数を一括して売却(または会社自らが買取り)し、その売却代金を端数の割合に応じて株主に現金で分配しなければなりません。
したがって、端数が発生したとしても、株主側から買取請求を起こす必要はなく、会社側の義務としての「端数処理」によって金銭的に清算されることになります。
💡 実務上の補足
現在の日本の証券取引所(上場市場)では、投資家保護や取引システム上の混乱を防ぐため、端数が出るような割合の株式分割は原則として認められていません。実務上は「1→2株」や「1→3株」といった整数倍の分割のみが行われています。