株主が持つ「自益権」は、結論から言うと定款であっても完全に奪うことはできません。 会社法第105条第2項により、株主の最も基本的な権利として保護されています。
1. 会社法による絶対的制限
株式会社は営利を目的とする団体であるため、株主から「経済的利益を得るチャンス」をすべて奪うことは認められません。
会社法第105条2項では、以下の両方の権利を全く与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない(無効である)と規定されています。
- 剰余金の配当を受ける権利(利益の分配)
- 残余財産の分配を受ける権利(解散時の資産分配)
つまり、「配当ももらえず、会社が解散した時の資産ももらえない」という株主を定款で作ることは法的に不可能です。
2. 実務上の「制限」と種類株式
完全に「奪う」ことはできませんが、種類株式(会社法108条)を活用することで、権利に格差をつけることは可能です。
| 制限の形 | 内容 | 法的効力 |
|---|---|---|
| 無配株 | 特定の種類の株式には配当を出さない。 | 可能(ただし、残余財産分配権があれば有効) |
| 残余財産なし | 解散時の分配を行わない。 | 可能(ただし、配当を受ける権利があれば有効) |
| 両方なし | 配当も残余財産分配も行わない。 | 不可能(無効) |
3. 共益権との違い
株主が会社の経営に参加する権利である「共益権」(議決権など)については、自益権よりも柔軟に制限が認められています。
- 議決権制限株式: 議決権を一切持たない「完全無議決権株式」の発行が可能です。
- 対照的に: 自益権は株主の「投資に対する対価」という本質に関わるため、前述の通り「両方なし」は許されません。
まとめ
- 自益権の全部剥奪は不可: 剰余金配当と残余財産分配の両方を否定する定款は無効。
- 片方の制限は可能: 「配当はないが、解散時には分配がある」といった設計は認められる。
- 投資家保護の観点: 株主としての最低限の経済的地位は、法律によって担保されている。