実務上重要な「新株発行」「組織再編」「決議要件」の例外ルールについて整理しました。
1. 第三者割当増資の条件
特定の第三者に新株を発行する場合、価格が「公正」か「有利」かによって手続きが異なります。
| 項目 | 公開会社(公正な価格) | 非公開会社(公正な価格) | 有利発行(共通) |
|---|---|---|---|
| 決定機関 | 取締役会 | 株主総会 特別決議 | 株主総会 特別決議 |
| 通知・公告 | 払込期日の2週間前まで | 不要 | 不要(総会で周知) |
| 備考 | 支配権移動時は別途規制あり | 定款で委任可能な場合あり | 取締役の説明義務あり |
2. 新株予約権の「特に有利な条件」
新株予約権における「有利な発行」は、単一の価格ではなく、権利全体の経済的価値で判断されます。
- 発行価格: 新株予約権そのものの取得対価(オプション料)。
- 権利行使価格: 将来、株式を取得する際の払い込み額。
- 判断の考え方: これらを組み合わせた「公正な評価額(理論上の価値)」に対して、付与される価格が著しく低い場合に株主総会の特別決議が必要となります。
3. 組織再編の「略式手続」
親会社が子会社の議決権の90%以上を保有している場合、子会社側の株主総会決議を省略できます。
- メリット: 迅速な意思決定とコスト削減。
- 簡易手続との違い:
- 略式手続: 「支配関係(90%)」に注目し、子会社側の総会を省略。
- 簡易手続: 「規模(20%以下)」に注目し、親会社側の総会を省略。
4. なぜ新設型再編で「金銭対価」が認められないのか
新設合併や新設分割において、対価を金銭のみにすることはできません。
- 制度の趣旨: 新設型は「新しい器」で事業を継続する手続きであり、旧株主が新会社のオーナーになることが前提。
- 実体上の制約: 設立されたばかりの会社には対価を支払う資金がなく、金銭対価を認めると既存株主の強制的な締め出しにつながる恐れがあるため。
5. 株主全員の同意が必要な事項
会社法上、最も重い要件である「100%の同意」が求められるケースは以下の通りです。
- 責任の全額免除: 役員等の会社に対する損害賠償責任を完全に免除する場合。
- 全部譲渡制限: 全ての株式を譲渡制限株式に変更する定款変更(公開会社→非公開会社)。
- 持分会社への移行: 組織再編により、株主が無限責任を負う可能性がある「持分会社の社員」になる場合。
- 株主ごとの異なる取扱い: 非公開会社において、配当や議決権について株主ごとに差をつける定款変更。
補足:公示催告(こうじさいこく)
有価証券(小切手や株券)を紛失した際、裁判所を通じてその証券を無効化(除権決定)し、権利を回復するための手続きです。一定期間の申し立てがなければ、証券は法的に無効となります。