会社法上、自己株式の取得が剰余金の分配可能額による財源規制(会社法461条)を受けるかどうかは、その取得事由が461条1項各号に列挙されているか否かで決まります。以下にまとめます。
財源規制を受けないケース(オーバーライドできるケース)
| 取得事由 | 根拠条文 | 財源規制 | 趣旨・備考 |
|---|---|---|---|
| 反対株主の株式買取請求(合併・分割・事業譲渡等) | 116条、469条、785条、797条、806条等 | 受けない | 少数株主保護を優先。461条に非列挙 |
| 単元未満株式の買取請求 | 192条、193条 | 受けない | 株主の投下資本回収の保障 |
| 無償取得 | 155条13号、施行規則27条1号 | 受けない | 対価を交付せず会社財産が流出しない |
| 他社からの剰余金配当・残余財産分配としての取得 | 施行規則27条2号・3号 | 受けない | 会社財産の流出を伴わない |
| 合併・分割等による他社の自己株式の承継 | 155条10号〜12号、施行規則27条 | 受けない | 組織再編に伴う承継。対価分配ではない |
| 一般承継による株式の移転(相続・合併等そのもの) | — | 対象外 | そもそも会社による「取得」に当たらない |
財源規制を受けるケース(オーバーライドできない・対比用)
| 取得事由 | 根拠条文 | 財源規制 | 趣旨・備考 |
|---|---|---|---|
| 株主との合意による自己株式の取得 | 156条以下(461条1項2号・3号) | 受ける | 分配可能額の範囲内に限る |
| 譲渡不承認に伴う会社による買取り | 140条1項(461条1項1号) | 受ける | 譲渡制限株式特有の場面だが規制対象 |
| 相続人等への売渡請求 | 176条(461条1項5号) | 受ける | 一般承継でも財源規制は外れない |
| 取得請求権付・取得条項付株式の取得 | 461条1項4号・6号等 | 受ける | 対価交付による財産流出を伴う |
注意点
- 譲渡制限の有無は財源規制の適用基準ではありません。判断は「取得事由が461条1項各号に列挙されているか」で決まります。
- 財源規制を受けない取得であっても、期末に欠損が生じた場合の取締役の塡補責任(465条)の適用関係は事由ごとに異なります。
- 売渡請求(176条)には、会社が一般承継を知った日から1年以内という期間制限(176条1項ただし書)があります。